短肋骨多指症候群short-ribs polydactyly syndrome (SRPS) (MIM #263510)/呼吸不全性胸郭異形成症(旧疾患名:窒息性胸郭異形成症) asphyxiating thoracic dysplasia (ATD, Jeune) (MIM#208500)

この章は医療関係者を対象として記載していますので一般の方には少し文章は難解です。 


a.原因
 AR。SRPSとATDは遺伝的異質性のある疾患で表現型も多様性がある。SRPSは4つの亜型、1型Saldino-Noonan型、2型Majewski 型、3型Verma-Naumoff型、4型Beemer型に分類される。1型と3型はATDとも臨床所見に共通点があり、遺伝子変異がdynein, cytoplasmic 2, heavy chain 1 (DYNC2H1)とintraflagellar transport 80 (IFT80)に報告されている。ATDはさらにtetratricopeptide repeat domain 21B (TTC21B)やIFT144などの遺伝子にも報告されている。また、いずれの遺伝子にも連鎖していないものもある。2型はNIMA (never in mitosis gene a)-related kinase 1 (NEK1)とDYNC2H1が候補であるが、確定的ではない。4型は原因不明である。またSRSPやATDと類似した臨床型を示す軟骨外胚葉性異形成症chondroectodermal dysplasia (Ellis-van Creveld) はEvC1または2遺伝子に変異が報告されている。
 発症頻度は不明であるが、SRPSとADを含めても1~2人/10万人程度と推定される。

b.再発率
 遺伝形式がARであり、保因者である両親から生まれ、25%は罹患、75%は両親と同じ保因者、25%は正常となる。

c.臨床像
 SRPSは周産期死亡を起こすことが多く、延命には呼吸管理を必要とする。4型以外は多指(趾)を認めること多いが、ないこともある。胎児期から重症の四肢短縮や胸郭低形成を示し、胎児水腫となることも多い。骨病変以外にも腎臓や心臓等の内臓の形態異常や機能障害など多彩な合併症を有する。X線所見は特徴的な多指症を認めれば診断に有用であるが、ないこともある。また胸郭狭小化と胸郭低形成は必発である。
 ATDは新生児期から胸郭の狭小化による呼吸障害を認め、小児期に死亡することが多いが、軽症例では長期生存も可能である。軽度の四肢短縮と低身長を示し、多指(趾)症を合併することもある。精神発達は通常は正常である。腎機能障害を呈して進行性に悪化することがある。胎生期には羊水過多を示すことが多いが、腎機能障害があると尿量減少により羊水過少となる場合もある。X線所見は胸郭狭小化がみられ、短縮した肋骨が水平に近い走行を示す。骨盤は腸骨翼の低形成と三尖臼蓋を示す。

d.遺伝カウンセリング
 ARであり、次子再発リスクは25%である。
 遺伝子診断は可能であるが、研究レベルであり、変異が見つからないことも多い。 
出生前診断は超音波検査により多指や短肋骨、胸郭低形成などの特徴的な画像をとらえれば可能であるが、SRPSの亜型や重症のATDとの鑑別などは困難である。超音波検査で特徴的な画像が得られない場合は、胎児CTが有用である。